ひんやりと澄んだ空気のなかで。
「調身・調息・調心」
坐禅の基本であるこの禅語は、
自らを見つめ直すことを教えてくれる。
「行く・逃げる・去る」
といわれるこの時季に。
ふと立ち止まった先で
何に出会うのだろう。
行基菩薩の開創から実に1,300年の歴史を有する当院は、現在「苔寺」として親しまれています。しかし、庭園に苔が繁茂し始めたのはわずか200年前の江戸時代後期といわれております。
参拝者の皆様には苔のみにとどまらぬ禅寺の冬の魅力を通して、ご自身と向き合っていただきたいと考えております。
「冬の参拝」では庭園を非公開とし、この時季限定で公開するいつもと異なる境内をお参りいただきます。これは、「庭園を休ませる」ことにも繋がり、庭園の保守・管理の観点からも必要と考えております。
参拝当日は、期間限定で開門する「総門」から入山いただきます。
まっすぐ伸びる参道の先、本堂・西来堂では、御本尊阿弥陀如来を囲む104面の襖絵を全面公開いたします。昭和の大画伯、堂本印象によるこの傑作は、寺院らしからぬモダンでエネルギッシュな抽象画で、この場が特別な場所であることを物語ります。
また、当日は「ざぜん時間」を実施いたします。境内で束の間立ち止まる時間は、皆様一人一人が自己と向き合うかけがえのない時間となることでしょう。
澄み渡る空気の中、忙しなく過ぎる日常から離れ、冬の西芳寺で一期一会のひとときをお楽しみいただければ幸いに存じます。
合掌
西芳寺
冬の参拝限定で開放する「参道」です。1977年に事前申込制を開始して以来、40年以上閉鎖されていました。
1970年代は京都でも4番目の拝観者数を誇っていた西芳寺。多くの観光客や修学旅行生が通った参道も、今ではコケが迫り出しており、静寂があたりに満ちています。緩やかな時の流れを感じることでしょう。
この景色は、事前申込制導入という当院の決断をあらわすシンボルなのです。
※期間中は「総門」にて受付を行います。他の季節とは場所が異なりますのでご注意ください。
難しい、厳しいと思われがちな「坐禅」。そのエッセンスに触れられるのが、ひらがなの「ざぜん」です。
引磬(インキン)という鐘の音を聞きながら、自己と向き合う5分間。
椅子に座るなど、リラックスした姿勢で参加いただけますので、まずは気軽な気持ちで始めてみましょう。
応仁・文明の乱の戦禍により焼失した本堂・西来堂は、500有余年の時を経て、昭和44年(1969年)に再建されました。外観は平安期の寝殿風、内部は鎌倉期の書院風と、寺歴に鑑み2つの時代様式を折衷し、総尾州檜造りで建築されております。工期は3年3ヶ月を要し、工匠は延べ7,000人を動員。伝統建築を再現すべく、当時の建築技術の粋を集め完成しました。
一方で、本堂を彩る襖絵には、禅寺には珍しい極彩色の抽象画が描かれ、煌びやかで力強い空間を醸成しています。静的な本堂と、動的な襖絵の見事な調和に、守るべき伝統はまどわず守り、価値のあるものはためらわずに取り入れる当院の文化・歴史が集約されております。
御本尊には、阿弥陀三尊像を安置しております。1339年に中興開山した夢窓国師は、浄土宗から臨済宗へ改宗したものの、寺歴を尊び、禅寺にあっても、阿弥陀三尊像を残したといわれております。
<遍界芳彩>を始めとした7つの画題で104面の襖絵が描かれています。作者である堂本印象が、80歳を目前にして構想に2年、制作に1年かけて取り組んだ自身最大規模の襖絵です。
本堂を彩る多様な表現の中で、伝統の打破を目指した印象の境地を、ゆっくりとお楽しみください。
襖絵の作者、堂本印象
堂本印象(1891-1975)は大正から昭和の京都画壇で活躍した日本画家です。当初は伝統的な日本画を描いていましたが、戦後海外の芸術にも積極的に触れて、スケッチや油絵を描きました。
自らが経験してきた表現に飽き足らず、常に現状を超える表現方法の模索に生涯を捧げた印象は、「新造形」という抽象表現を確立し、新たな伝統を創り上げました。
「一切の過去的なものから手を切らない限り真の創造はできないし、明晰な意識の上に立つ伝統の否定こそ真の伝統である」
堂本印象美術館:京都府立堂本印象美術館 (insho-domoto.com)
はじめに
西芳寺の参拝には「事前申込」が必要となっております。
事前申込の詳細はこちらを御覧ください。
期間 | 2023年1月21日(土)から2023年2月27日(月)。 ※2023年1月10日(火)から1月20日(金)、2月28日(火)から3月2日(木)は襖絵入れ替えのため、参拝を受け付けておりません。ご了承ください。 |
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日時 | こちらよりスケジュールをご覧ください。 ※日によって開門時間が異なりますのでご注意ください。開門時間の記載がない日は開門いたしません。 ※待合所がありませんので、当院からお送りする参拝証に記載の時間にあわせてお越しください。 ※1月9日(月)まで、および3月3日(金)以降の参拝はこちらをご確認ください。 |
参拝冥加料 | お一人様3,000円以上 参拝は中学生以上の方とさせていただきます。 ※乳幼児を含み,小学生以下の方の同伴はご遠慮願います。 |
注意事項 | 開門する場所が他の季節と異なります。入場口付近に看板を設置しておりますのでご注意下さい。 庭園の維持管理のため、冬の参拝期間中は庭園の拝観を行っておりません。 本堂では襖絵を公開しており、写経体験は実施しておりません。 |